【感想】仮面ライダージオウ 第1話「キングダム2068」

クウガから始まった平成仮面ライダーも早いものでもう20作目。

前作のビルドが大変に気持ちのいい最終回を迎えたため、引き摺ることなくジオウの1話を待つことができた。

 

未来のジオウ、オーマジオウレジスタンスたちを蹂躙するシーンから始まるのはやはり否が応にもディケイド1話のアバンを思い出しつつ、けれど同じようにレジェンドライダーたちとの戦いではなかったのは「過去作の踏襲はしつつ、しっかりジオウの物語を紡いでいく」という作品そのもののスタンスを表している、と言ってしまうには些か早すぎるか。ここはもう少し話が進んでからもう一度考えてみたい部分である。

 

さてそんなアバンを乗り越え、Shuta Sueyoshi feat. ISSAというファンには嬉しいスペシャルユニットの主題歌『Over “Quartzer”』とスタイリッシュなOP映像にノックアウトされつつ始まった第1話。

 

何度か見返して見て分かったのは「物語はもう始まっている」と端々で告げられていたことだった。

主人公の常磐ソウゴの前に現れ魔王になるのを阻止しようとする少女ツクヨミ、魔王となるソウゴを抹殺しオーマジオウの消滅を図る戦士明光院ゲイツ、魔王を降臨に導く預言者ウォズ、独自に王を生み出そうとするタイムジャッカーのウール

ソウゴ以外の誰も彼もが既に「未来のジオウ」によって影響を受けており、それを中心にして動いている。彼らには1話より前から既に物語があり、重大な決断や選択をして、その行動によって何も知らないソウゴを翻弄する。

彼らの前では2018年のソウゴは世界を動かす主人公ではなく、「魔王になるのを阻止する物語」の主人公であるツクヨミのターゲットであり、「過去の魔王を抹殺する物語」の主人公であるゲイツの因縁の相手なのだ。そして彼らはソウゴを通して未来の魔王を見ているだけで、今ここにいるソウゴのことは実はほとんど考慮されていない。

 登場人物たちに翻弄されるという点だけ見れば世界の中心には関われない、あるいはほぼ存在しないに等しいモブにも近い(=物語が無い)のだが、翻弄される原因はそもそも未来のソウゴであり、未来の彼は逆に他の登場人物たちに影響を与える働きをしているため間違いなく主人公でもある

これまでの『ただのモブ』から他者と影響を与えあう『主人公』へのターニングポイントこそが、文字通り「ソウゴの物語が始まる」この第1話というわけだ

 

その転換点に当たるのが言わずもがな「変身」のシーンである。

翻弄されるだけだったソウゴが「サイテーサイアクの魔王ではなく、最高最善の魔王になってみせる」という決断をして変身することで、『ソウゴの物語』として「仮面ライダージオウ」の時が動き出す。

 

ここまでやたらめったらにくどい言い回しをしたが、何が言いたいかって結局第1話は凄くワクワクした! それに尽きる。

 

 

噛み応えのありそうな内容なので今から気になっている部分もある。一番気になっているのはこれだ。

 

 こう考えたのはウォズの台詞がきっかけだった。

ソウゴは間違いなくこの1話が初変身であり使い方など知るはずもないのになぜかご存知のはずと言い、実際ソウゴは変身できてしまう。何かおかしいと引っかかるのだ。

その後の戦闘シーンもさすが高岩さん、棒立ちの姿勢で戦いの素人っぽさを出している。と同時に戦闘中のアクションは初変身のそれにしてはしっかり決まっている攻撃と、相手の様子を窺ったり防御時の完全素人の動きとで、まるで攻撃の仕方だけは知っているかのようなどうにもチグハグな印象を受けた。

 

そこで頭に浮かんだのが周回である。

まず1周目のソウゴがいて、彼は王様になることができた。しかしそこで何かが発生し、彼の物語はもう一度「最初から」やるハメに。だが王様になった記憶と経験だけは朧気ながらに引き継ぐことができ、その状態で2周目以降が始まったのではないか。そう考えたのだ。

ならばドライバーは使えるだろう。前の周回の自分が使っていた記憶が残っているか、経験が無意識ながら身体を動かすからだ。

同様の理由で戦い方も知っているだろう。攻撃に比べて相手の様子を窺ったり防御がヘタクソなのは、アバンでのオーマジオウの「攻撃こそ最大の防御」ぶりを見れば分からなくもない。

何より「生まれた時から」という言葉の意味が説明できる。なにせ周回前の自分は王だったのだから、その物語をもう一度やり直す=生まれ直しても王になる未来は確定しているのだ。それに記憶の引継ぎが相まれば「生まれながらの王である」という言葉も出よう。

そもそもソウゴは公式のキャラ説明で『「なんか行ける気がする」と言ってはなんでもやってのける力を持つ。苦境に陥っても笑ってしまうポジティブな思考の持ち主。』と書かれているのだが、これも「これから起こることを既に経験済みで乗り越えてきたことが引き継がれているから、解決できる未来が定まっているし苦境も打破できると無意識に知って行動しているのでそう見える」と解釈することもできる。

他方「生まれた時から」に関しては洗脳・刷り込み何かの目的のために作られたなどの説も唱えられており十分可能性はあると思うのだが、この物語が「時を巡る物語」という事を考慮すると、個人的にはやはり時間が関わる周回説を推したいところである。

ソウゴの名前も「時は相互」と読むことができ、未来が過去となって現在に続く周回であればまさしく時間同士が相互に関わり合った、名は体を表す展開にもなる。

 

……などなど、まだ1話の時点だというのにこんなにも妄想をたくましくさせてくれるポテンシャルを秘めているなんて、改めて先が楽しみになって仕方がない。そのうえ歴代平成ライダーを演じた役者陣が再び登場してくれるなんて、フゥーッ! テンション上がるぅー!

 

ライダーの歴史を遡る物語の果てに、ソウゴはどんな結末を迎えるのか?

我々は彼の未来を知っている。しかしそれが全てではないし可能性は一つではない。

まだ誰も知らない「仮面ライダージオウ」の未来へ、過去の仮面ライダーを知り、今この時代に生きる我々も、共に1年の旅路に出発と行こう。